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企業やフリーランサーが取引先から仕事を引き受ける場合には、その取引相手が信用に足る企業なのかどうか、与信調査を行う必要があります。この記事では、企業総務部の担当者やフリーランサーに向けて与信調査の概要や重要性、調査方法、調査の際の注意点などを詳しく解説します。
与信調査とは、取引前に取引を行う相手先企業に対して行う調査のことで、信用調査や企業調査とも呼ばれます。企業やフリーランサーにとってさらに業績を伸ばすためには、新しい取引相手の開拓が必要です。しかし、その新規の企業がもし取引中に経営不振に陥ったら、回収不能な債権を抱えることになりかねません。
そこで与信調査として取引前に会社の経営状態や業務内容、支払い能力などを調べて、問題なく取引が行える企業なのかを確認します。これらの与信調査は企業だけでなくフリーランサーでも必要な作業であり、個人でも与信調査は行えます。
日本の多くの企業では大量に取引をする場合、「掛取引(かけとりひき)」が用いられます。掛取引とは、取引のたびに代金を支払うのではなく、1カ月分など期間を決めて取引金額をまとめて精算する取引方法です。
掛取引は支払い回数を減らせるメリットがありますが、相手先企業に支払い能力がなくなった場合、売掛金を回収できないリスクがあります。
与信調査はこの売掛金の未回収リスクを軽減する目的で行われます。与信調査によって取引先の企業に倒産などの心配がなく、売掛金を支払える企業かどうかを把握します。売掛金が回収できないことで自社の経営状況や資金繰りを悪化させないためにも与信調査を行う必要があります。
与信調査は一般的に、自社で「社内調査(内部調査)」を行い、次にインターネットなどを使って行う「外部調査」を実施し、そして相手先企業に訪問する「直接調査」の3段階で行われます。
「社内調査」は自社で可能な範囲で行う調査方法で、これまでに取引がある場合には支払い遅延などがないかを確認します。次にインターネット上で公開されている情報を検索するなどして、社内にある取引先の企業データだけでは不足している部分を「外部調査」で補足します。そして最終段階として取引先企業に直接訪問してヒアリングや様子などを確認する「直接調査」を行います。
与信調査には前述した「社内調査」「外部調査」「直接調査」を含め、さまざまな方法があります。
社内調査は、自社が所有する情報を活用して行う調査です。過去に取引があった企業の場合、資料が残っているであろう経理部や営業部の取引資料を調べます。企業によっては営業担当者が個人で情報を持っている場合もあるため、担当者へのヒアリングも忘れずに行いましょう。
社内調査は自社で行われるため、時間やコストがかからず手軽にできるのがメリットです。しかし、情報量が限られており、営業担当者からのヒアリングでは主観的な判断で情報が偏るおそれがあります。また、新規の取引先の場合は過去の資料がないため社内調査ができません。
外部調査とは、外部から取引先企業に対する情報を仕入れて調べる方法で、「官公庁調査」「検索調査」「側面調査」の3種類があります。この調査を実施することで、別の方法で得た情報と食い違いがないかを確かめます。それぞれの調査方法は以下の通りです。
官公庁調査は、商業登記簿や不動産登記簿など、官公庁に登録されている情報を閲覧して調査する方法です。商業登記簿を閲覧すると取引先企業が実在しているかどうか、事業目的は何かなどが確認できます。一方の不動産登記簿では、土地や建物の所有権や抵当権の状況を確認できます。
なお、商業登記簿では「履歴事項全部証明書」まで取得することが重要です。この証明書には基本的な過去の履歴が記載されているため、商号変更、役員変更、本社所在地の変更、資本金の増減などがわかります。本社所在地があまりに頻繁に変わっている場合には過去に不祥事を起こした可能性があり、資本金が急激に減額されている場合には、現在の資金状態に不安要素があるなど、その履歴から企業の現状が推測できます。
検索調査は、インターネットや企業パンフレットなどを活用して情報を集めて調べる方法です。たとえば、取引先企業の公式ホームページには、資本金や代表者名、主要取引銀行、従業員数などの情報以外にも決算報告やIR情報といった多くの情報が入手できます。ほかにも口コミサイトや過去のニュースでもその企業の情報を取得できます。
ただし、企業によっては公式ホームページがずっと更新されていないケースがあるため、更新日をチェックする必要があります。
また、インターネットでは「G-Searchデータベースサービス」をはじめとする「帝国データバンク」や「東京商工リサーチ」などの有料企業情報サービスを使うことで、与信判断に役立つ企業の「評点」や「業績データ」が見られます。これらのデータサービスは、コストはかかりますが、時間をかけずに取引先企業の信用度や反社チェックなどが行えるメリットがあります。
側面調査は次に紹介する直接調査の情報が誤っていないか、裏付けをとるために行われる調査です。側面調査では、対象企業が取引している企業や金融機関、仕入れ先、さらにはビルのオーナーやその企業の競合他社など、第三者から話を聞いて情報を収集し、直接調査で得た情報と一致するかを確認します。
なかには、その企業について詳しい情報を知っているケースもあり、有益な情報が得られるかもしれません。ただし、調査している企業のライバル社に聞く場合には、わざと相手先企業の悪評を伝えてくるケースもあるため注意が必要です。
直接調査は、相手先企業に訪問したり、電話やメールで確認したりする調査方法です。相手先企業を訪問して行う際は、基本的に代表者や担当者にヒアリングを行います。また、訪問時に事務所や工場などの設備の状況や従業員の働きぶり、在庫状況なども一緒に確認します。このように確認事項が多いため、訪問前には確認する項目を書き出しておくとよいでしょう。
なお、直接調査を実施するときには、話し方によって相手に不快感を与えるおそれがあるので、コミュニケーションの取り方に注意が必要です。そして可能な限り訪問での調査が望ましいですが、相手先企業が遠方にある場合やすでに取引をしている場合、追加で調査・確認する場合には、電話やメール、FAXを使って調査を行います。
このように自社で企業の調査を行う場合には、取引前に「売掛取引依頼票」を作成してもらいましょう。売掛取引依頼票には、その企業の所在地や代表者、銀行口座などを記入する必要があるため、相手先の正確な情報を入手できます。しかも、万が一未払いといったトラブルが生じた際には事実確認のための有力な証拠書類になります。
依頼調査は、自社で調査を行わず外部の専門業者に調査を依頼する方法です。自社では調査ノウハウがないため確実な情報収集が難しい、調査に人材を充てられないといったケースでは、調査会社などの第三者へ調査を依頼する依頼調査の利用が適しています。
依頼調査を実施した場合、調査会社に相手先企業について客観的に調べてもらい、取引先企業の情報や企業評価が記載されたレポートを受け取ります。自社では得られない情報も提供してもらえるため、コストはかかりますがメリットも多いです。
専門の調査会社に与信調査を依頼した場合、調査にかかる時間や費用は調査会社や依頼した内容によって異なります。一般的には大手調査会社で調査にかかる期間は1カ月程度、約2~3万円の費用がかかります。ただし、調査会社によっては別料金で調査期間の短縮が可能です。また、相手先企業が遠方にある場合には、出張料がかかるケースもあります。
なお、調査会社の中にはすでにさまざまな企業のデータを保有しているため、1社あたり約2,000円の低価格で企業情報のみを購入することもできます。
与信調査を依頼する際には、相手先企業の財務状況に問題がないか、収入力はあるか、経営者が信頼できる人物かといった点を押さえて調査する必要があります。財務状況では資産や担保余力をはじめ、金融機関への未払いがないかなどを確認しましょう。そして、売上の推移や営業状況などから、売掛金がきちんと回収できる収入があるどうかをチェックしましょう。
また、企業の経営者についてもその人柄や経営方針など、経営者としての手腕だけでなく人間として信頼できる人物かどうかも確認することが大切です。
与信調査の分析・評価には、定量分析と定性分析による2つの評価があります。定量分析は、損益計算書や貸借対照表などの数値を使用した分析方法で、企業の経営状態や業績などを把握できます。
対して、定性分析は経営者の資質・企業の技術力・営業力・ブランド力・市場動向など、数値では表せない情報を分析するもので、企業の潜在能力や今後どれだけ成長するかなどが予測できます。これら両方の分析結果を見て、取引をするか判断することが重要です。
与信調査は、安心して取引できる取引先かどうかの判断に用いられる調査ですが、調査や分析の仕方によっては情報の精度が落ちる可能性があるため、注意しなければなりません。
特に集めた情報が最新情報ではない場合、情報が新しい情報しか入手できなかった場合には、企業の現状を正しく把握できません。適切な分析を行うには、企業の過去から現在までの信頼度の高い情報が求められます。
また、上場企業などの大企業であれば財務状況などの公開が義務付けられているため情報が集まりやすいですが、中小企業の場合には企業の情報が公開されていないケースが多く、信用度の判断に必要な情報を集められないことがあります。このような場合には信用調査会社に調査を依頼することで信頼度の高い調査データが得られますが、高額な費用がかかるケースもあるため、注意が必要です。
与信調査とは取引前に相手先企業と健全な取引ができるかを確認する調査です。与信調査は一般的に「社内調査」「外部調査」「直接調査」の3段階で行いますが、確実な情報収集が難しい場合には専門会社に任せる「依頼調査」がおすすめです。企業に限らずフリーランサーでも取引先を過信せず、与信調査を行うようにしましょう。
与信調査(信用調査)とは? 必要性と調査のやり方
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