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今時の広告映像における制作過程に思うこと。そしてこれからを考える。

広告映像いわゆる”CM”と呼ばれるものは、現在様々な媒体で活⽤されています。テレビCMはもちろん、サブスクリプションCM、SNS広告などがあげられるでしょう。

それらは、初めは媒体に合わせた効果的な映像作りとして丁寧な創造的な映像であったように思えました。しかし、撮影や編集技術や特殊効果の進歩により、短時間の労⼒で急速に制作され始め、過剰なほど映像で溢れているのが現状ではないのでしょうか。

広告映像は、私たちの消費⾏動に大きな影響を与えます。それを⾒て、思わず商品やサービスを購入しまうことはありませんか?もちろん、そのための映像なのですが、時としてそれは悪影響や批判的要素から認知される、いわゆる「炎上」と呼ばれることもあります。それは⼈々の価値観に訴え、良いイメージを残すだけでなく、私たちの不安や欲求を煽るものが出回っていると思います。
広告映像は⽣活に⽋かせない存在ですが、映像制作するにあたり悪影響にならないよう注意が必要なのです。そのため、テレビCMなどはしっかりとオンエアするための考査が存在するのです。

しかし媒体によっては、考査どころか著作権、肖像権、も安易にされているところが往々にして⾒受けられます。そこには次のようなことが考えられます。

予算的に安価な制作?主流は本当にそれてでいいのか?

昨今、映像制作の低価格化がまずます進⾏しています。特に副業的に参⼊する「動画編集」などが顕著です。動画編集のソフトはその安価で簡単に編集できることから、少し訓練を積めば映像をつなぐことができます。

もちろん、発注者側(クライアント)は映像制作費の低予算化は、願ってもないことだと思います。「少しでも安く映像制作ができるなら」と思うこともあると思います。しかし、ここで問題が発生します。
なぜ価格が下がり、いわゆるバーゲンセールのような状態になってきているのか。それは、「映像の⼤量⽣産によるパターン化」によるものであると考えています。

映像制作にかかる⼈件費と時間を最⼩限にするためには、その「質よりも量」を遂行しなければ採算が合いません。そのためには映像制作のパターン化、単⼀化です。特に編集においての構成のパターン化は顕著で、大体はどれをとっても映像の流れは同じになっています。

例えば同じ映像でも、結婚式などに⾏われる「エンドロール」と呼ばれるものは、それでも良いのです。準備があり、挙式、披露宴、と流れが決まっており、それを記録して流す。もちろん「プロとして」カメラマンはその新郎新婦、両家ご両親、出席者を満遍なく、映像に記録しコメントも撮り、最後に流すわずか2〜3時間の間に撮影編集しなければならないため、毎回同じ構成で良いでしょう。むしろそれでなくてはなりません。結婚式はあくまでプライベートの記録であり、記念なのです。

ところが現在の広告映像は、広告という創造的で独創的な映像の特徴をどんどん失わせて行っています。映像はパターン化され、どこも似たような映像・構成になってしまい、どれを⾒ても結果的に何も残らない印象があります。それは先ほども申し上げたように、あまりにも適正価格でない低予算で制作するといった弊害があるからでしょう。

低予算では、⾼品質な映像を制作するための⼈材や機材を揃えることができません。また、映像の企画や脚本にも⼗分な時間をかけることができません。そのため、構成はストーリーが単⼀化され、独⾃のメッセージが視聴者に伝わらなくなっているのです。
映像制作費の低予算化は、業界にとって⼤きな問題です。映像の種類によって予算があるのですが、それがどのような種類の映像でも同じ制作費になってきているのが現在の状態です。

映像は私たちの⽣活に⽋かせないものです。私たちに情報や娯楽を提供してくれるだけでなく、私たちの考え⽅や価値観を形成するのにも役⽴ちます。しかし低予算化は、表現に語弊があるかもしれませんが、現在「同類の映像が垂れ流し状態」であるため、⾃ずと私たちの⽣活に悪影響を及ぼす可能性があります。

低予算化を解決するためには、映像業界全体で取り組む必要があります。さらに⾔えば、企業様(クライアント)にも映像を改めて理解してもらう業界としての努⼒が必要だと考えています。

訂正な価格と制作とは

映像制作費を増やすためには、映像の価値を⾼める必要があります。当然、映像は私たちの⽣活に⽋かせないものだということを私たち⼀⼈⼀⼈が認識する必要があるでしょう。特に広告映像は企業様にとって重要であり、「商品認知」「売上アップやイメージの強化」など計り知れない大きなメリットがあります。

確かに⼀時は、テレビCMの制作費が⾼騰し、中⼩企業やスタートアップ企業様にとってはテレビCMを制作することが困難になっていました。そして現在は露出媒体が増え、制作会社同⼠の競争で低予算でテレビCMを多数制作するといった状態になっています。ですが⼤量制作とパターン化で広告映像としての質が段々と低下しています。そこで訂正価格のヒントを少しですが提案し、あまりにも下がりすぎていく予算を考えてもらうためのご提案をしたいと思います。

(1)クリエイティブに予算をかける。

制作する前の企画や構成に予算をかける。実はこのポイントをしっかりと考案しないとオリジナリティや差別化、訴求ポイントが⽣まれません。考えることは実はタダではないのです。
⽇本では昔から成果物(商品、実物品)ありきで成果物前のアイデア等に金額をかけてきませんでした。馴染みがなかったのです。いまだにプロポーザルなどのプレゼンテーションでは採択されない限り、料⾦が払われないことが一般的です。

先ほども申し上げましたが、「知恵を出すのはタダではない」のです。これは会社員であれば、毎⽉お給料をもらっているので⼀つ⼀つの企画構成はあくまで給料に含まれていると考えてもらえれば良いでしょう。つまり仕事があってもなくても会社は社員の皆様にお給料を支払っています。
しかし、本来は企画構成を考えるためには時間と労⼒が必要なため、予算をとり、プロフェッショナルの⼈たちへの報酬が伴わなければいけないのです。

無料や低価格で制作するのであれば、⾃ずと安易で熱意がない映像になるでしょう。なお、その対価としての予算は会社員の平均給与の半分を基準として考えると良いと思います。

(2)タレント/モデルのレベルを常に考える

タレント起⽤は、制作費を⼤きくします。また、最近では買取り/バイアウトは、契約上稀ですので注意が必要です。肖像権/著作権が厳しい今、契約の期間や使われる媒体の種類によって⾦額が決まっていくのでその辺はしっかりと交渉が必要です。

また、キャスティングのプロフェッショナルと制作会社、代理店が常⽇頃からリサーチしています。そのため、このような専門家をうまく活⽤していくことをおすすめします。

(3)⾃社で制作する

映像制作の技術的進歩により、外注(制作会社/代理店/フリーランス)でなく、⾃社で制作することで、前述した⼈件費=社員の活⽤で制作費が削減できるからです。ただし、ここでのクリエイティブは品質が落ちることは⾔うまでもありません。映像制作はできますが、プロフェッショナルではないため広告における映像制作は困難になるでしょう。

やはり地道に経験値を積んでいくことが重要ですので、初めのうちは外注の度合いを少しづつ減らしながら徐々に内製化していくと良いでしょう。

(4)インターネット広告/SNS広告を活⽤する

インターネット広告/SNS広告は、テレビCMに⽐べて制作費が安価で、ターゲットを絞って広告を配信することができます。この場合も極端に低予算で制作しても、パターン化された差別化のできない広告映像に落ち⼊りやすいので、企画構成はしっかりと予算組みすることをおすすめします。その方が結果として視聴者に伝わる良い映像ができるでしょう。

(5)効果測定を⾏う

映像制作をしたら効果測定を⾏いましょう。可能であれば効果測定を依頼してみましょう。効果測定の結果を参考に、今後の制作に活かすことができます。効果測定を疎かにしてしまうと何度制作しても効果の出ない映像となり、結果的に「無駄」になってしまうことも少なくありません。

広告映像はその⽬的がはっきりとしています。企業イメージのアップ商品や企業の認知売り上げの向上と⾔うものが⼤前提にあります。つまり、この効果を狙うために映像制作を行うのです。これは⼤量にある映像の中での差別化、独創性が本来発揮されるべきものであり、昨今の低予算化にあってパターン化された映像で埋もれてはならないと考えています。

AIを使う意味とは

現在、AIが注⽬を集めています。映像制作のAIは、映像の制作を⾃動化することができます。
例えば、映像制作のAIを使って映像の撮影、編集、字幕の作成などをすることが可能になりました。AIにより、映像の制作にかかる時間とコストを削減することができるでしょう。

映像配信のAIは、映像の配信を最適化することができます。例えば、AIを使って映像の視聴者数を予測したり、視聴者に最適な配信⽅法を検討したりすることが可能です。映像配信のAIにより、映像の配信効果を⾼めることができます。

このように、AIは映像の企画、制作、配信など、さまざまな場⾯で活⽤することができます。そしてAIは企画書の作成に役⽴ちます。例えば、AIは市場調査や競合分析を⾏い、企画書の作成に必要な情報を提供することも可能です。企画書のレイアウトを作成したり、効果的な企画書を作成するためのアドバイスを提供したりすることができます。

AIは、企画書の作成に必要なスキルや知識を持たない⼈でも質の⾼い企画書を作成することができます。AIを使って次のような企画書を作成することができます。

・新商品の発売を告知する企画書

・新サービスの提供を告知する企画書

・企業のブランディングを⽬的とした企画書

・イベントの告知を⽬的とした企画書

 

企画構成を考えるにため、編集をするため、⽂章を考えるため、などより一層便利で使いやすくなっています。

しかし、まだまだそのまま使えるものではありません。それは様々な権利関係です。ネット上の様々な情報を、⾒事なまでに整理編集して提案してくれるAIですが権利関係はまだまだ不十分と言えます。「この⾳楽、画像は著作権や肖像権は⼤丈夫なのか。」「この⽂章やキャッチコピーはどこから持ってきたのだろうか。」「コピペして貼り付けてきたものだろうか。」などの不安の種は尽きません。

最終的には、確認事項がたくさんあります。そのままではなく必ずプロの⽬を通すと良いでしょう。それはストーリー性や辻褄が合った内容にでなければ映像制作はできないからです。ただ、指針としてこれから積極的に使用していくべきツールなので⼤いに活⽤していくと良いでしょう。活用することによって、AIの精度も徐々に向上してくるでしょう。

なお、ターゲット層の分析AIは、膨⼤な量のデータを分析して、ターゲット層のニーズや興味を把握することができます。この情報をもとに、ターゲット層に響く映像を企画することが可能です。

最後に、映像制作における3段階プレゼンの提案

低予算であれば当然企画もパターン化され、1つのご提案で精⼀杯です。本来、映像企画のプレゼンでは、予算に合わせた企画を3段階に分けて提案する必要があります。また、その効果と売上にどの程度反映するかを明確に説明する必要があります。予算に合わせた企画を3段階に分けるメリットは、次のとおりです。

(1)予算の範囲内で、最適な企画を提案できる。

(2)企業様(クライアント)のニーズに合わせて、柔軟に企画を変更できる。

(3)映像の理解と認知を絞って次の展開(次回の映像制作)に繋げる。1回では終わらないようにする。

予算の範囲内で、最適な企画を提案するためには、企業様のニーズを明確に絞る必要があります。
※ご要望が当然のようにあれもこれもと⾔ってほしいなどリクエストが多岐に渡るため。

映像の認知で重要なのは時間とその時間内にいかに理解できる範囲で表現できるかに尽きるでしょう。そして企業様のニーズに合わせて、柔軟に企画を変更できるようにしておくことが重要です。

そのために3段階の企画を提案することです。
3段階の企画を提案することで、企業様は、次回のステップアップに託すこともできます。表現⽅法の違い、バリエーションで、期待感と安⼼感、そして予算の中での満⾜感やお得感を創出することができるでしょう。

まとめ

いかがでしたか。
これからの映像制作は更なる便利さと裏腹に、しっかりとした企画と適正な予算感で制作していく必要があり、現在の過度な低予算化によりパターン化された“映像の氾濫”で終わってしまいます。

映像制作をする者として肝に銘じてクオリティの⾼い広告映像にしていかなければならないと痛感しております。もちろんそのためには、企業様(クライアント)のしっかりとした理解へも深めていかなければなりません。

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栗原 博之

栗原 博之

栗原 博之(くりはら ひろゆき、1956年 - )は、日本の企画演出家/CMディレクター/クリエイティブディレクター。東洋シネマを経て、1987年フリーになる。独立後、JALのPR/CMをメインにおよそ10年間、企画演出を行う。 1990年代、JAL(企業21世紀向けて篇・It’SJAL篇・SKYPLUS篇・JALで行くTDL篇 )他多数 その間、様々な業種を手掛けるようになり、1990年〜2000年代ミリオンパワー(モキモキ篇)、アメリカオンビデオ(床屋篇)、会津大学(「開設」篇)、宝くじ(「女神伝説」篇)、くろがね学習デスク、アートネイチャーキャンペーン、コジマ電気シリーズ、ぺんてる(「ハイブリッド/修正液/企業」篇)、講談社雑誌えくぼシリーズ、その後、生保/サントリー飲料/不二家/おもちゃ・各種ゲームソフト/不動産/そしてTOYOTAのプロモーションをメインに演出している。 なお、日本国内にとどまらず、海外での制作も多く、米国/欧州/台湾/タイ/上海と、現地スタッフとの共同制作も多い。 2003年度は、台湾で大手飲料メーカー「統一」の豆乳のCMを台湾の制作会社と行う。 そして2006年度は中国上海で東芝のCMを中国スタッフと制作。 日本国外での撮影制作活動は多岐にわたる。出典:Wikipedia