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現実世界と仮想世界を融合させる最新の映像技術として注目を集めているのが、ボリュメトリックキャプチャです。この記事では、ボリュメトリックキャプチャとはいかなる技術かを示し、その仕組みやメリット、制作工程などについて解説します。また、ボリュメトリックキャプチャで制作した映像の例を紹介するので参考にしてください。
ボリュメトリックキャプチャは、現実世界の人物や空間を被写体とし、さまざまな角度から撮影した被写体の画像データを集めてコンピュータで処理することによって、任意の方向から見た被写体の3D映像をつくり出す最新のVFX技術です。この技術を活用すれば、制限なく360度どこからでも自由な視点で映像がつくれて、任意の視点から実際のカメラで撮ったかのような映像を再現できるに違いありません。
また、ボリュメトリックキャプチャを用いれば、現実世界の3D映像と仮想世界の3D映像を融合させることが可能です。ボリュメトリックキャプチャという技術は、スポーツの映像で使用されて一躍注目されるようになりましたが、近頃ではミュージックビデオやテレビCMにも使われるようになってきています。
ボリュメトリックキャプチャのメリットは、カメラの動きが撮影後に思いのままに指定できることから、撮影中は被写体となる人物にスタジオの中心で演技してもらい、それをチェックするだけで済むことです。また、人物などの3Dモデルを変形したり、動かしたりできるため、表現の幅を大きく広げられます。さらに、ボリュメトリックキャプチャは映像表現のみにとどまらず、スポーツなどの解析にも活用できる可能性を秘めています。
ボリュメトリックキャプチャとCGとの違いは、ボリュメトリックキャプチャのほうがCGよりも、簡単にリアルな表現ができるところにあります。
動きが複雑で不規則なものをCGだけでつくろうとすると、制作にかなりの時間と手間をかけても、動きに不自然さが残ってしまい、リアルさが失われてしまいがちです。しかし、ボリュメトリックキャプチャを用いて実際に動いているものを撮影できれば、どんなに動きが複雑で不規則なものであっても、基本的にはすべての動きを自然な感じで再現できます。
一方、CGにもメリットがあり、それはボリュメトリックキャプチャよりも、3Dモデルの編集や照明の当て方の変更が簡単にできることです。両者には一長一短があります。
ボリュメトリックキャプチャでは、まず実在する人物や場所の周囲を、全方位をカバーするのに十分な台数のカメラで取り囲んで、まるごと撮影するという作業が必要です。次に、撮影して取得したデジタルデータを用いて3Dモデルを生成し、レンダリングを行い、自由に視点を設定して高画質の3D映像として再現するという仕組みで自由視点映像を制作します。
なお、撮影に使用する複数台のカメラは、カメラ間の整合性をとるため、シャッタータイミングがすべて同時になるように正確に同期させなければなりません。
ボリュメトリックキャプチャ技術を活用した場合に、どのような作品ができるのかは、実際の映像を見たほうがイメージしやすいでしょう。以下に、ボリュメトリックキャプチャを用いて制作された映像の実例を3つ紹介します。
こちらは、2022年4月29日に世界ではじめてボリュメトリックキャプチャを利用して野球中継を実施したときの3D映像です。1塁、2塁、3塁の塁審が装着したカメラを含め、87台のカメラを用いて撮影した画像を、たったの3秒で高速処理して、臨場感のある3D映像に変換しています。グラウンドの中に入り込んで、普通は見ることができないさまざまな角度から、選手たちの多様なプレーを楽しめる、新感覚のプロ野球中継です。
アンカーテキスト:【自由視点映像】4/29巨人×阪神【ボリュメトリックビデオ】
https://www.youtube.com/watch?v=8fIq22BqQeg
こちらはボリュメトリックキャプチャ技術と、全方位からの立体的な音響を実現する360 Reality Audioという技術を融合して制作された、中島美嘉さん『Delusion』のミュージックビデオです。360度あらゆる方向から聞こえてくる音と自由な視点を活かしたカメラワーク、あえて画像をバラバラに崩す3DCGデータならではの表現方法などを駆使して、アーティスト特有の世界観が見事に表されています。
アンカーテキスト:中島美嘉 『Delusion』 “ボリュメトリックキャプチャ技術”ד360 Reality Audio” MUSIC VIDEO&メイキング
https://www.youtube.com/watch?v=Ithkf8OZTj4
こちらの動画ではボリュメトリックキャプチャ技術を利用して、上下左右360度すべての方位を見回せる全天球映像技術を進化させた、新しい映像制作について語られています。そのなかで目をひくのはダブルダッチというスポーツで、360度上下左右すべての角度から人間とロープの動きを再現する映像です。
高速で手回しされる2本のロープのなかを複数の跳び手が跳びかうダブルダッチでは、ロープが当たってしまうため、ロープの中の視点から跳び手の動きをカメラで直接とらえることはできません。しかし、ボリュメトリックキャプチャ技術を使えば、通常ではカメラが入れない位置でも、そこにあたかもカメラがあるかのようにリアルに被写体の動きをとらえることができます。
アンカーテキスト:全天球映像技術の先を見据えたボリュメトリックキャプチャ技術【ソニー公式】
https://www.youtube.com/watch?v=_TphowJZQ4c
ここでは、背景と人物を用いたボリュメトリックキャプチャの制作工程を簡単に紹介します。
まずは、背景となる3D空間のモデルを作成しておきましょう。
次に、ボリュメトリックキャプチャスタジオを撮影場所とし、人物を囲むように配置した複数のカメラで人物を撮影します。
撮影が終わったら人物の3Dモデルを生成し、背景の3Dモデルに合うようにカメラの動きをつけていきます。
続いての工程は、3Dモデルのレンダリングです。ここで行うレンダリングとは、帽子のつばで顔に入った影や衣服の内側など、カメラで撮影しきれなかった部分を自然な仕上がりに見えるように修正する作業のことです。
3Dモデルのレンダリングが終わったら、背景についてもレンダリングを行いましょう。最後に、レンダリングした人物と背景を合成すれば、映像の完成です。
ボリュメトリックキャプチャスタジオは、360度をグリーンバックで囲まれた空間に全方位をカバーできる十分な台数の高性能カメラが設置されていることが、大きな特徴です。設置されている高性能カメラは、人物などを3Dでキャプチャするのに不可欠な機材で、スポーツなどの速い動きに対しても同期が可能です。
またスタジオ内には、撮影した画像から3D空間データを構築し、3D空間内で仮想カメラを動かして各種映像コンテンツの制作や分析などに活用できる2D自由視点映像や3Dデータを生成できる独自のシステムが備えられています。
ボリュメトリックキャプチャは、現実世界の人物や空間をさまざまな角度から撮影し、その画像データから3Dモデルを構築して、任意の方向から見た人物や空間のリアルな3D映像をつくり出せる最新のVFX技術です。ボリュメトリックキャプチャによる自由視点映像によって、これまでにはなかった斬新な映像作品が誕生しています。
ボリュメトリックキャプチャ技術とは? 自由視点映像制作の仕組み
==写真・イラスト==
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